古い抵当権がそのまま残っている場合の対処法

不動産登記

今回は、曾祖父名義の不動産に関するご相談がありました。この不動産については、相続手続きが行われておらず、調査を進めたところ、大正時代に設定された抵当権がまだ登記簿に残っていることが判明しました。相談者の方もこの抵当権に心当たりがないとのことでした。

このような古い抵当権は「休眠担保権」と呼ばれます。金融機関での融資や相続手続きを進める際、明治時代や昭和初期に設定された担保権がそのまま残っていることがあります。しかし、普段から不動産の登記簿を確認する機会は少ないため、多くの方がその存在に気づかないことがほとんどです。


古い抵当権が残る理由と問題点

通常、抵当権抹消登記は担保権者(抵当権を持つ者)と不動産所有者が共同で申請します。しかし、古い抵当権の場合、次のような問題が発生することがよくあります。

  • 抵当権者の所在が不明
  • 抵当権者が亡くなっており、相続人も不明

こうした状況では、抵当権の抹消手続きが複雑になることがあります。抵当権が残っていると、不動産の売却や新たなローンの申請ができないなど、不動産取引に支障をきたすため、相続手続きと併せて抵当権の抹消も行う必要があります。


解決方法: 弁済供託による抹消手続き

今回のケースでは、「弁済供託」を利用して、休眠担保権の抹消手続きを進めました。弁済供託による抹消手続きは、以下の条件を満たす場合に行うことができます(不動産登記法第70条第3項に基づく)。

  1. 担保権者が行方不明であること
  2. 被担保債権の弁済期から20年が経過していること
  3. 債権の元本・利息・遅延損害金の全額を供託すること

これらの条件を全て満たす場合、不動産所有者が単独で抵当権抹消手続きを行うことが可能です。


抹消手続きの流れ

抹消手続きを進める際には、以下の書類を準備して申請します。

  • 供託書正本
  • 行方不明証明書(内容証明郵便の返送封筒)
  • 弁済期を証明する書類(閉鎖謄本)
  • 委任状(代理人が申請する場合)

これらの書類を用意し、供託を行った後、不動産所有者が単独で抵当権抹消登記を申請します。


注意点

休眠担保権の抹消手続きは、通常の手続きと異なり、事前の準備が必要となります。また、今回のケースでは抵当権者が行方不明の個人でしたが、法人が抵当権者の場合や、書類が不足している場合には、異なる手続きが必要になることもあります。

こうした手続きには専門的な知識が求められるため、司法書士に相談することをお勧めします。親身にご対応させていただきますので是非当事務所までご連絡下さい。

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